『普通の家族がいちばん怖い 徹底調査!破滅する日本の食卓』
アサツーディ・ケイ200Xファミリーデザイン室
岩村暢子著
新潮社(2007年)
ずいぶん前に図書館に予約リクエストを入れておいた本だけど、暮れになってようやく私の手許に来てくれた。
面白すぎる。
もう抱腹絶倒。
なぜそんなに面白いかといえば、本書はまさに「よそさまを覗き見している」気分を大いに味わえるからである。不謹慎だけれど、本来人間は覗き見が好きであるからして、よそさまの家のご様子がよくわかる本書は非常に愉快なのである。
といっても、本書はそのように不謹慎で不真面目で不遜な書物ではけっしてない。
よそさまを覗き見する気分で本書を読み進みながら、私たちは我に返る。
「え、これ、どっかで聞いた話よねえ」
「う、これ、なんだかウチとそっくりじゃん」
「げ、これ、あたしのいつもの台詞じゃん」
「ぐ、これ、もしかして……」
もしかすると、ではなく、間違いなく本書が語っているのは「私たちのこと」なのである。現代の子育て世代の食卓がいかに貧相なものであるか。各家庭の経済事情でやむなく貧相な食生活に陥っているのではなく、いかに積極的に「貧しい食」へ突き進んでいることか。自分たちの食卓がこんなにも貧しいことに、いかに無頓着でいることか。
岩村さんの前著にはすでに触れたけど。
[URL]
前著は、私たちの母親世代のことが主に述べられていた。読み方はひとぞれぞれだけど、私の場合、「なんでウチの母ちゃんてばいつもああなんだろう」と何かにつけて感じていたことの幾つかは、謎が解けたように思えた。それは、だからといって母と娘の相互理解が進むとか、文化風俗慣習の継承を促すとか、そんなことにはけっしていきなりつながらない。母は母のまま、私は私のままだ。だけど、私の場合(なんどもいうけど)、ちょっぴり母に優しくなれそうに思った分だけ、岩村さんの本を読んだ甲斐は確かにあったのである。
で、今回の『普通の家族……』だが。
前著でおせち料理の家庭内継承について多少述べていた岩村さんは、本書では「クリスマス」と「お正月」に的を絞って現役子育て世帯を対象に実施した調査結果をレポートしている。この二大イベントは、日本の普通の家庭ではいったいどのように過ごされているか……たぶん、私と同じような世代の人たちにはだいたい想像がつくであろう。それはもちろん「クリスマス重視、お正月軽視」である。
クリスマスには、夫は戸外の電飾に励み、妻の手作りリースを玄関ドアや室内のあちこちに飾り、これまた妻の趣味であるトールペイントでこしらえたサンタやトナカイを所狭しと並べ、子どもの人数分だけ(!)ツリーを置き、子どもの人数分だけ(!)クリスマスケーキを用意し、チキン(ファストフードだったり、デパ地下だったり)料理を買ってきて、ワインとシャンメリー(子ども用)で「ムードたっぷり」に盛り上がって楽しむ。
なぜ「子どもの人数分」必要かというと、「きょうだいは平等であるべきだから」だそうだ。
ケーキは市販のスポンジを人数分買って、きょうだいそれぞれがトッピングする。
「ツリーもケーキも、子どもの作品ですから」
……その気持はわからなくもない(泣笑)。
ウチは一人っ子だ。何人もお子さんのいるご家庭、どうですかっ。きのめさん、おさかさん。
いっぽう、お正月。元旦の食卓にはカップ麺とペットボトル飲料。「お正月にはおせちというものを食べるのだということを子どもにはきちんと伝えたいから」という家庭では、小さな「おせちパック」みたいなものを買っておいて、テーブルの真ん中に「飾って眺める」。本物のおせちは夫か妻どちらかの「実家で食べる」。