週の真ん中が休みだからこんなことになるんじゃないの?という話
2008-12-03


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今日の本とは全然関係ないけど、昨日見た「秋」です。


『水曜日のうそ』
クリスチャン・グルニエ著 河野万里子訳
講談社(2006年)


水曜日になったらこの本の話をしよう、と思って早や幾歳。って大げさだが実際すでに数か月。水曜日にブログ更新って簡単じゃありません。
気がつけば巷はクリスマスムードいっぱいだ。秋は? 来てたか? どこ行った?

この本、フランスでは児童書もしくはティーンエイジャー向け図書の範疇に入るだろうか。行きつけの図書館では一般の仏文学書架に入っていた。表紙も地味。フランスのこの辺の小説って、日本の図書ジャンルでは行き場がない。『ペギー・スー』シリーズですら、一般書架に入ってる。ハリー・ポッター(私は読んでないけど)あたりを読む子どもなら楽勝で読めると思うんだけど……児童書架においてくれよって感じのフランス小説、けっこうあるんですよねー。
まあ、たしかに仏語って、訳すと堅い言い回しの日本語になってしまう……話し言葉の乱れは日本に負けず劣らず凄まじいけど、書き言葉はガチッと確立されてるからなー。
でも何とか頑張って紹介していかないと児童書界からフランス文学の影が消えてしまうではないか! といってみたが、日本の出版界からは「いや、別に頑張らなくても、英米文学で十分足りてますから」っていわれそうだ。

ハイ、スミマセン。
だいたい、『マグヌス』を高校生が読む国なんだ。
[URL]

Actes Sud Juniorという出版社から出ている「初めて読む小説シリーズ」は対象年齢が「9歳から」とある。9歳というとなんだかちっちゃいみたいだけど、フランスではCM1(小学校4年生に相当、「高学年」扱い)なので、子ども自身にも「読むぞ」という自覚が出てくるんじゃないか。その証拠にこのシリーズは大変読み応えのあるものが多くて、私などは夢中になって読んでしまう(赤面)。ほんとに「初めて読む」シリーズかよって思うくらい。面白いんだけどなあ。

本書『水曜日のうそ』の対象は9歳ではありません。フランスではコレージュ(小学校6年〜中学3年相当)部門で文学賞を獲っている。本書の主人公イザベルは15歳。15歳だとだいたい「すべて経験済み」が普通のあの国では珍しくまだ恋に恋しているような少女として描かれている(物語の中でちゃんと彼氏ができるけど)。だからCM2(小学校5年生相当)くらいから読めちゃうと思う。

イザベルの家には毎水曜日おじいちゃんがお喋りにやってくる。水曜日は学校が休みだから、孫娘イザベルも、大学で教える息子(イザベルの父親)も家にいるからだ。わずかなこのひとときを、おじいちゃんはとても愛している。おじいちゃんのことを大好きなイザベルも、その来訪を楽しみにしている。ただ、イザベルの父だけがうんざりしていた。
そんな折、父親がリヨンの大学に空きポストを紹介されて、一家は引っ越しを決める。おじいちゃんには内緒で。おじいちゃんの水曜日のひとときのために、一家は水曜ごとにパリの元のアパルトマンにやって来て、いつもどおりそこで暮らしているかのように振る舞うのである。
それほど重要な、水曜日という週の真ん中の休日。
日本では起こりえない話である。
とはいえ、なんで水曜日なんだ、という理由さえ押さえて理解したら、話はよくわかる。もともと中学生向けの話だから、物語そのものはあまり複雑にはならない。読み進むと結末は見えてくる。

このおじいちゃんはほんとにいいおじいちゃんだ。
イザベルもよくできたものわかりのいい少女である。
父親が自分の父親(おじいちゃん)を疎ましがっているが、よくある父子関係だ。
母親は舅思いのよくできた嫁である。
この二人が知恵を絞ったあげくの「水曜日のうそ」。
イザベルの彼氏がまたそんなフランス男いるわけないと思わせるほどいい少年で、「うそ」にからんで重要な役回りを果たす。


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