しばし立ち止まれ14歳!
2007-10-13


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先月の陸上予選会。出場した6年生女子一同である。賞状を持っているのがさなぎ。


『いじめ 14歳のMessage』
林 慧樹 著
小学館(1999年)


本書は、著者の林さんが本当に14歳のときに書いたもので、「第18回パレットノベル大賞審査員特別賞受賞作品」だそうである。林さんは小学校6年生のときと中学生のときにいじめを受けたが、そのときの辛い経験をもとに書いたのがこの小説だ。自分の経験をもとにしているけど、物語は一人称ではなく「彗佳(すいか)」という名の主人公をたてている。
中学生の彗佳。クラスでは、町の実力者の娘である陽子らが、理由もなくふざけておとなしい千夏をいじめていた。陽子と自分は仲良しだと思っていた彗佳は、あまりの様子にもうやめたらと言うが、その翌日から彗佳が陽子らのターゲットになる。いじめはあっという間にエスカレートするが、気づいているはずの教員らは見て見ぬ振りをする。ほかのクラスメートも知らんぷりだ。彗佳にとって辛かったのは、千夏が陽子らの仲間になっていじめる側に回ったことだった。彗佳は身も心もぼろぼろになっていくが――。

14歳の小説であるからして、「勢いにまかせて書いた」感あり、描写がだらだらとしつこい箇所ありで、たしかに幼さや未熟さは否めないけれど、いじめられる側の心情を吐露した素直な文章である。といって、被害者感情むき出しの「訴え」「叫び」ばかりでなく、客観的に状況を語るところもあって、著者が小説としての形態を整えるのに苦心した跡も見受けられる。
文学作品というよりは、中学生の長い手紙といっていい。この年頃の子どもの気持ちに寄り添いたいと思う人なら、読み甲斐があると思う。

この本、たしか1000円もしなかった。まだウチの子は保育園児で、「いじめ」も「14歳」もまだまだ遠い遠い彼方にあった頃、たぶん世間で何か起こっていたのだろう、私は書店で発売されているのを見たとたん衝動買いしている。
素直な文章はストレートに語りかけるけれども、先に述べたようにだからといって何度も読んだり、熟読して味わうような類のものではないので、私は一度読んで、娘の書架にねじこんだままほうっておいた。

やがて娘が小学生になり、少しはニュースを理解できるようになると、この本のタイトルの「いじめ」が目についたようだ。だが残念ながら小学校低学年に中学生の語彙は難しすぎた(苦笑)。
やがて進級し、自分も学校でろくでもない被害に遭うようになり、また「金八先生」なんて類のドラマを見るなどして再び本書を手に取るが、読書癖がついていなかったため冒頭の2、3ページで即眠くなり断念(泣)。
だいたい、ワクワクするような文体ではないので無理もない。読み聞かせを試したが、ほんの数行で寝るのでやめた。

しかしである。
昨日、とうとうウチの子は本書を読み終えたのである。
しかも読み始めてから4日ほどである。早いではないか。
おまけに「これ、途中ちょっとだらだらするよな」などと生意気をほざくのである。

陸上の練習に明け暮れた夏休み。休みが明けて、これは推測だが、娘のクラスメートたちはたぶん「読書ノート」にぎっしりと「成果」を書き込んで登校したに違いない。
2年に一度配布される読書ノートに、「読んだ本」として書き込まれるタイトル数が二ケタに達したことは、娘の場合、自慢ではないが、いまだかつてなかった。しかしクラスメートの中には読書ノートが「1冊では足りない」子がいくらもいる!
というわけで、あたしも読むぞ!という気になってくれたのである。
喜ばしいことである。
かくして、5年生のときにもらったそのノート、6年生の8月の終わりまで2、3冊しか記入がなかったのに、10月初めで30冊に達しようとしている。天変地異の前触れかもしれないので皆さん要注意である!

本書の前には、前回紹介した『12歳たちの伝説』を読んでいた。(全巻読破はまだだが)

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[てぃーんず]

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