なんでこんなもの「本」にするのよっ(怒)
2010-05-27


『冷たい雨』
北川悦吏子著(※ノベライズ:河野恵子)
角川書店(角川文庫/1999年)


冷たい雨、という言葉で私が思いだすのはシンガーソングライターのイルカが歌った『いつか冷たい雨が』という歌である。中学生の頃、下手なギターをジャカジャカ弾いて友達と夢中になって歌った。イルカは『なごり雪』が売れてから大人の恋の歌をよく歌ったが、それ以前は『とんがらし』『サラダの国から来た娘』など片思いをする少女の心を表現したものが多く、でなければ草花や動物を愛でる歌をよく歌った。『いつか冷たい雨が』もその精神は『てのひらを太陽に』と一緒である。僕らはみな同じように生きているんだ、という。歌詞は今読むと若干ナイーヴだけれど、ストレートで邪心がない。私はこの歌がほんとうに好きだった。

♪雪が降る駅の片隅で
 誰にもいたずらされないように
 うずくまっている年老いた犬 (……)

 広い道路の真ん中で轢かれてしまった三毛猫
 その上を何台もの車が通りすぎてゆく
 思わず目を閉じてしまった私を許してください (……)

 (……)
 人間以外のものたちにももっと優しくしてください
 同じ時を生きているのだから
 朝がくれば夜もくるし
 生まれてそして死んでゆく
 私が土になったらお花たちよそこから咲いてください ♪

(c2001〜2009 Interrise Inc. All Rights Reserved)



新学期早々、娘が学校から文庫本を持ち帰ってきた。近頃よく本の貸し借り(というか、一方的に借りているというか……我が家にはさなぎの友達に貸すような頃合いの本がない)をしているのでてっきり借りてきたのだと思ったら、
「お母さん、本、もらってきた」
「もらった? なんで? 誰に?」
「○○がもう要らんからっていっぱい持ってきたのを、みんなで取り合いっこして、ウチはこんだけもらった」

○○というのはクラスメートだが、私の知らない子の知らない呼び名で、しかもそれっきりさなぎの話題に出てこないので忘れてしまったんだが。こんだけもらった、といって彼女のリュックから出てきたのは文庫3冊。

「よしもとばなながあったから、それ欲しい!ってゆーて、その近くにあったのもついでにもらった。よしもとばななのほかは、そやからぜんぜん知らん本やけど」

ゲットしたよしもとばななの本は、カバーが色褪せてしまった『ハチ公の最後の恋人』だった。
そのほかについでにもらったという本2冊がいったい何か、ご想像いただけるであろうか。
うち1冊はなんと『陰影礼賛』by谷崎潤一郎(爆)

「あのさあ、なんでこれ選んだん?」(笑いを抑え切れない私)
「選んだんと違て、適当に取ったんやってば」
「題名とか、著者名とか、聞いたことあるやろ、これ」
「ない」(きっぱり)
「で、いずれはこれも読むつもりやろ?」
「ぜんぜん。漢字多そうやん題名も四字熟語やし。お母さんにプレゼント、と思て」
「それはそれは、ほんまに、ありがとう(笑)で、こっちは? これも適当に取ってきたん?」
「うん。表紙が可愛いのもあって」
「なるほど」



そう、表紙が可愛いのである。赤いクレヨンで塗りつぶされた空間にうなだれる白い犬。ヘタウマ線画といったノリだけど。なんとなく犬の表情もユーモラスかつ切ない。塗り残されて白く浮き上がる「冷たい雨」という手描き文字のようなタイトル。上手にできた表紙カバーである。
開くと、そのカバー袖にはべっぴんさんの写真。著者の北川さんである。シナリオライター。
ふうん。

軽めの恋愛コントみたいな読み物が続く。
どこかで聞いたような話、よくありがちな展開、誰にでもいそうな友達のような登場人物、どこででもしてそうな恋バナ。

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