2010-03-25
そしてウスタルハーノフさんは、1年半の実刑を大阪刑務所で受け、入管に移された後、すぐに難民不認定の通知を受けとったのです。難民として、生存するための一縷の望みを日本に求めた2人の若者に対して、政府が行ったのは、このような残酷な仕打ちでした。一方、ガカーエフさんに手渡された、千葉景子法務大臣名での「通知書」には、次のようにあります。
1、あなたは、本国において、チェチェン共和国の独立派メンバーとして活動した旨申し立てていますが、仮にあなたの供述を前提としても、身柄拘束されたものの3日間で釈放され、その後出国するまでの約4年間、本国に滞在していたことなどからすれば、本国政府があなたを難民の地位に関する条約(難民条約)上の迫害対象として関心を寄せていたとは認められません。
2、あなたは、チェチェン人であること及びイスラム教徒であることを理由に迫害を受けるおそれがある旨申し立てていますが、各種関係書類などから、ロシア連邦において、これらの事情のみをもって難民条約上の迫害を受ける状況にあるとは認められません。
その他のあなたの主張等をすべて併せ考慮しても、あなたが難民条約第1条A(2)及び難民の地位に関する議定書第1条2に規定する難民に該当するとは認められません。
私たちはこのような、わずか一枚の書類をもって、チェチェンで起こっている事実を無視し、そこから逃亡してきた人を再び追い返そうとする行為に、強い憤りを覚えます。
通知書は「約4年間、本国に滞在」としていますが、そのほとんどの期間は、ロシアではなく、カザフスタンで過ごしており、「本国」という表現は明白な間違いです。そして、これまでチェチェンでは、事実として、チェチェン人であるという理由だけで人口の二割にも及ぶ人々が殺されてきたのです。また、この通知書は、彼が独立派として戦闘に加わった以上、一般市民以上に危険な立場にいることを、まったく考慮していません。
難民認定のために、ガカーエフさんは長い時間をかけて、苦しかったチェチェンでの戦いや、自分が受けた虐待を見つめ直し、関係者の前ですべてを吐露することに耐えました。その間に肺気腫にかかり、ストレスから鬱病にもなりました。それでも提出された陳述書や、チェチェンで起こっている広範な人権侵害についての提出資料(注1など)も、ここではまったく無視されているのです。
不認定通知にある「各種関係書類」とは、いったい何を指すのでしょうか。日本語で刊行されている多数のチェチェン関連書籍のうち、一冊でも参照されているのか、私たちは強い不信を感じずにはいられません(注2)。
私たちは法務省・入国管理局の決定に抗議するとともに、不認定の具体的な根拠を提示することを求めます。そして何より、彼らを難民条約に則って難民認定し、必要な庇護を行うことを、強く求めます。
チェチェン連絡会議 2010年3月23日
署名者
青山正(ピースネット・市民平和基金)
稲垣収(ジャーナリスト・翻訳家)
岩間優希(ジャーナリズム研究者)
大富亮(チェチェン連絡会議)
岡田一男(映像作家・チェチェンの子どもたち日本委員会)
姜信子(作家)
中田考(同志社大学教授)
林克明(ジャーナリスト)
村山敦子(団体非正規職員、ロシア語通訳・翻訳業)
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