2011-08-01
大学ノートに
教室の机に 樹々の幹に
砂に 雪に
ぼくは君の名を書く
読み終えたすべてのページに
何も書かれぬすべての白いページに
石に 皿に 紙に そして灰にも
ぼくは君の名を書く
金彩の絵画に
戦士が抱える武器に
王らの冠に
ぼくは君の名を書く
ジャングルに 砂漠に
巣に エニシダに
わが幼き日のこだまに
ぼくは君の名を書く
夜ごとの不思議に
昼の白いパンに
結びつながれた季節に
ぼくは君の名を書く
青空の記憶の断片に
金色に輝く黴臭い池の水面(みなも)に
月が生きて映る湖面に
ぼくは君の名を書く
夜明けの風のひと吹きごとに
海の上に 船の上に
とてつもない山の頂にも
ぼくは君の名を書く
苔むす雲に
汗かく嵐に
降り止まぬ鬱陶しい長雨に
ぼくは君の名を書く
きらめくものかげに
多彩色の鐘に
肉体的な真実に
ぼくは君の名を書く
目覚めたあぜ道に
拡げられた街道に
はみ出す広場の数々に
ぼくは君の名を書く
灯もるランプに
消えるランプに
集まったぼくの家々に
ぼくは君の名を書く
鏡に映したように二分された
果物と 貝殻の形した
ぼくの部屋のぼくの寝床に
ぼくは君の名を書く
食いしん坊で優しいぼくの犬に
ぴんと立ったこいつの耳に
よたついたこいつの肢(あし)に
ぼくは君の名を書く
玄関のバネ戸に
慣れ親しんだものたちに
祝福の流し灯籠に
ぼくは君の名を書く
さし出された肉体に
友のいる戦線に
差し伸べられたそれぞれの手に
ぼくは君の名を書く
マネキンだらけのショーウインドー
注意深そうな唇
だんまりのその向こうに
ぼくは君の名を書く
壊されたぼくの避難所に
崩れたぼくの灯台に
憂鬱の壁のあちこちにも
ぼくは君の名を書く
欲望のない不在に
剥きだしの孤独に
死の階段に
ぼくは君の名を書く
取り戻した健康に
消え去った危険に
記憶のない希望に
ぼくは君の名を書く
たったひとつの言葉のちからで
ぼくは人生をやり直す
君を知るために ぼくは生まれた
君を名づけるために
「自由」。
(自由/ポール・エリュアール Liberte / Paul Eluard)
※書かれたのは1942-1943とされる。
ポール・エリュアールはフランスの詩人。
Paul Eluard, poete francais (1895 〓 1952)
原文はコレ。
いろんな人が訳しているようだけど、原詩を読むべし。
今日、初めて、私の言葉にしてみたくなった。
拙訳を読んでくれてありがとう。
だけど、原詩を読むべし。
Liberte
Sur mes cahiers d’ecolier
Sur mon pupitre et les arbres
Sur le sable sur la neige
J’ecris ton nom
Sur toutes les pages lues
Sur toutes les pages blanches
Pierre sang papier ou cendre
J’ecris ton nom
Sur les images dorees
Sur les armes des guerriers
Sur la couronne des rois
J’ecris ton nom
Sur la jungle et le desert
Sur les nids sur les genets
Sur l’echo de mon enfance
J’ecris ton nom
Sur les merveilles des nuits
Sur le pain blanc des journees
Sur les saisons fiancees
J’ecris ton nom
Sur tous mes chiffons d’azur
Sur l’etang soleil moisi
Sur le lac lune vivante
J’ecris ton nom
Sur les champs sur l’horizon
Sur les ailes des oiseaux
Et sur le moulin des ombres
J’ecris ton nom
Sur chaque bouffee d’aurore
Sur la mer sur les bateaux
Sur la montagne demente
J’ecris ton nom
Sur la mousse des nuages
Sur les sueurs de l’orage
Sur la pluie epaisse et fade
J’ecris ton nom
Sur les formes scintillantes
Sur les cloches des couleurs
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