姑息で愚かでノータリンな文部科学省
2010-08-01


先日、育児関係の小冊子の編集にかかわることで、現在の保育所待機児童数について役所に問い合わせをした。回答は想像していたとおり、少子化傾向に歯止めはかかっていない、子どもの総数は減る一方なんだが、両親共に働く家庭は周知のとおり増加しているし、またひとり親家庭も増えているので、保育所またはそれに準ずる託児施設への入所希望は増える一方である、ということだった。それでも、取材先の自治体はかなり努力をしており、入所希望児童全体に対する待機児童の割合は全国比でいくとずいぶん小さいそうである。待たなければならないのは一刻も早く働きたい保護者にとって辛いが、他の自治体に比べればまだ恵まれているのだということだった。ふうん。ただ、回答してくれた担当役人さんはこう言った。
「幼稚園は定員割れしてましてね。幼稚園によっては、事態は深刻なんです。もっと幼稚園という選択肢が検討されれば、待機児童数も変わってくるんですがね。現状では無理ですねえ」

朝ゆっくり始まって昼過ぎにはもう終わる幼稚園なんて、フルタイムで働く人々には、そんなの検討どころか俎上にも載りはしない。延長保育や、あるいはユニークな教育内容とかで付加価値を高めて、なんとか子どもを集める努力をしている幼稚園もあるだろう。しかし、いずれにしてもフルタイムで働く人の場合、通常会社に最短でも8時間拘束される。通勤時間等を加味すると、合計で10時間くらい子どもを預けられる保証がないと日々回っていかない。保育所はそれを可能にしてくれるが、幼稚園では無理である。よほど、「ここでなければ私の子どもを託すことはできない」と思わせてくれるほど、保育あるいは教育環境が整っていなければ、幼稚園の存在価値は、少なくとも私みたいな人間には、ゼロである。

私は幸運なことに家から近い場所に夜間部も併設している民間保育園があり、申し込みをしたときは定員オーバーと言われたが、年度末に空きが出て入所が叶った。よかった。助かった。私の父母はまだ現役で染めの仕事をしていたし、寝てばかりいる赤子のときはよかったが、ちょこまか歩き始めた子を常時見張ることは無理だった。
こうして、まだ1歳の娘を午前中から夜まで10〓12時間預けていた。保育士さんには、ちゃんと見ててくれること、しっかり遊んでくれること、食事について報告してくれること、これ以外に何も求めるつもりはなかった。日本の場合、どこへ預けても、この三つがしっかりされてれば御の字だと思っていた。

フランスに滞在していた頃、フランスの教育機関で最も優れているのは幼稚園である、と聞いた。間借りしていたアパートの若い夫婦もそう言ったし、大学の教員たちもそう言った。幼稚園は仏語でエコール・マテルネルといい、日本の小学校にあたるエコール・プリメールに入学する前の3年間を過ごす。なぜエコール・マテルネルが素晴しいと言われるかというと、エコール・マテルネルの職員は保育・幼児教育のプロ中のプロだからだ。私は日本の保育士資格、幼稚園教諭資格について取得条件等何も知らないが、私が学生の頃は、たいして意欲も志もない女子が「短大行って保母さんでもちょこっとやってお嫁にいくわ」などと発言することは何ら珍しくなく、また許されたものだったので、保母さんてそういうふうになれるもんだと思っていたもんである。現在はどうか知りません、ごめんなさい。

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