世界はハイチを忘れてはいけない
2010-02-08


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ハイチは違う。(中略)地震の前からハイチは破綻国家だったが、今は国家ですらない。
 (中略)地震が起きるずっと前から、世界はハイチを諦めていた。》(32〜33ページ)

本誌編集部執筆による記事は、だからハイチが本当に機能する国家として立ち直れるかどうか、ハイチが独立以来真の意味でもったことのない「首都」をもてるかもしれない、そのチャンスが到来しているのだと締めくくる。

たしかにそうかもしれない。一度シャッフルして配り直して最初から。トランプの七並べみたいに、一枚ずつ、ていねいに、並べ直してきれいにする。それさえ手伝ってやれば、後はカードの一枚一枚が自分の裁量で動き、考慮し判断して新たに道を切り開いていくのなら、それでいいのだ。

でも、ハイチにそれは望めないのである。世界中が無視していた、といったけれど、国家は無視していても人道支援機関はそれなりの活動を継続してきていた。もちろん今回多くの職員を失った国連も長期にわたってミッションを継続中だった。貧困に喘ぎ、衛生状態が悪く、医療もままならない国だからMSF(国境なき医師団)はじめ各国のNGOが詰めていた。だが当のハイチ人たちに「この国を何とかしよう」という気がまったくない。ハイチの公務員の半数は幽霊職員であり、賄賂なしで商売や就職が成り立つ例はない。いつかも書いたけど、上層部は無教養で金の亡者。稀に運良く教育を受けたハイチ人もいるけど国外在住。地震直後、フランスのニュース番組でハイチ出身のジャーナリストが悲痛な面持ちで「私もまったく家族と連絡が取れません」と、その時点でわかるだけの惨状をレポートしていた。とこのように、働けるハイチ人はみんな国の外なのだ。

おまけに、大量の孤児や、養育が不可能な親元を離れた子どもが、先進国に大量に養子縁組で引き取られていく。つい先頃も不法に子どもを連れ出そうとした米国人たちが捕まっていたが、合法か不法か、善意か悪意か、よりも(もちろんその点は大いに問題にすべきなんだけど根本的に)、ハイチの子どもたちをハイチから連れ出してよその国で何不自由なく生活させることが最良の方法なのか? 彼らは先進国で高等教育を受け、マナーと教養を身につけ、高い知性と明晰な頭脳で、あるいは芸術的才能で、あるいは身体能力で、で、どうするのだ? 成人を迎えたとき、たとえばフランスではフランス国籍取得の道が開けると予想される。この子たちはけっきょく、養子縁組で引き取られた国の国民として生きるのか、誇り高き共和国の一市民として? あるいは貧しき故国へ帰ってその再建と発展に力を尽くすのか? 後者の場合、そのような意識を持たせるにはそのように教育しなければならない。あなたは私たちの子どもとして暮らしているけれど、ほんとうは、故郷はハイチなのよ。地震で壊滅したハイチ、地震が起きる前から破綻していたハイチ。カリブ海のあの島が、あなたの生まれた国なのよ。

10歳以上の子どもなら、言わなくてもそうした意志をもちうるかもしれない。けれど、引き取られた子どもたちの多くは6歳未満だ。

私はとてもこれ以上子ども育てる力はないけれど、もしも万が一にもそんなふうにして子どもを引き取ったとしたら、その子の肌が黒かろうと赤かろうと、アナタは日本人なのよ、ほら、お箸とお椀のもちかたはこうよ、とかなんとか躍起になっちゃいそうである。荒城の月と浜辺の歌を懸命に教えそうである(笑)。親心とはそういうもんだ。でも、ハイチの子どもたちを引き取った皆さんはどうお考えなのだろうか。

ハイチを忘れないために例の歌をもう一回。
(ちょっと聞き飽きたけどね。笑)

Un geste pour Haiti, une chanson pour collecter des dons
by liberation

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