2008-04-10
文藝春秋社『文学界』2008年3月号
巻頭
『あなたたちの恋愛は瀕死』川上未映子
まだしつこく「オサムのメグミ」とのたまうのですか、などとおっしゃらないでくださいまし。
わたくし、『文学界』という雑誌を生まれて初めて手にいたしましたの。
ほんとうに、触れたこともなかったんですの。
けれど、どこかで、広告かしら、
特集 小林秀雄 没後四半世紀
対談 「小林秀雄」とはなにものだったのか
橋本治
茂木健一郎
という文言を目にしまして、これは読まなくてはいけないわと、所用で足を運んだ図書館で、さっそく予約を入れましたわ。
まあ、そんな顔をなさらないでくださいまし。わたくし、雑誌だって図書館で借りることにしていますの。なぜって、わたくし、雑誌を捨てられないたちですから、でも雑誌は書架での座りが悪いので、つい平積みにしておきますもので、我が家の床という床の空いてる場所には古雑誌が積み上がってますの。ちょっと恥ずかしくて、よそさまに見せられませんわ。
ですから、もう買うまい、と決めたんですのよ、よほどお気に入りのものを除いては。
『文学界』にしても、同じような考えの方がいらっしゃるのか、けっこう順番待ちが長かったんですけど、ようやく借りてみて、あらためて思いましたけど、わたくしなどにはほんとうに読むところのない雑誌でしたわ、ほほほ。
橋本さんと茂木さんのお話は、『小林秀雄の恵み』を読んだ者にはべつに何も得るところのないお喋りで、読もうかどうか迷ってるかたには、はてさて、どう映ったのでしょうね、面白かったのでしょうか。わかりません。
ただ、ぷっと笑ってしまった箇所がありました。
それは、橋本さんがご自分の『窯変源氏物語』について話しているくだり。どなたかが『窯変―』を評して「(源氏物語って)ハーレクインだったのか、などと思った」というようなことを書いたそうなのです。
その書評を読んだ橋本さん、「じゃあ、アンタは今まで『源氏物語』がハーレクインじゃないとでも思っていたのか?」と思ったとか、そんなお話でした。
ごめんなさい、もう借りた本は返していますので、手許にないので正確な引用ができないのですけど。
奇しくも今、同志某おさっちブログで平成おばギャル版イケメン源氏とでも申し上げればよいかしら、面白い読み解きが展開していますけれど、実をいうと、なかなか、わたくしはついていけないんですの(笑)。
昔ハーレクインロマンスというシリーズが出たときに、流行に乗って何冊か読みましたけど、ナニをどう読めば面白く感じられるのかわからなくて、本を大切にいつまでも手許に置くわたくしですら、とっとと処分してしまったような記憶が。
『窯変―』よりも、本来は、原典のほうがよりハーレクインっぽいのですよね。それを気取りなくストレートに現代語に置き換えるために、橋本さんの施した工夫のおかげで、高尚な王朝絵巻にまつりあげられ手の届かない平安文学と化してしまった『源氏物語』は実はハーレクインだった、と気づいたかたが少しでもいらしてよかったわ、というふうに受け留めることにいたしましょう。
でも、このたび、「メグミ」はそれではありませんの。
巻頭に、芥川賞を受賞なさった川上さんの短編が掲載されておりました。
これが、くくくけけけと喉で笑っちゃう面白さ、なんですの。
初めて手にした『文学界』に、たぶんそこになければこれまた一生読むことのなかったであろう作家の珠玉の一編を読むことができました。これをメグミと呼ばずして何といいましょう。
文体は過去の自分を暴かれるようでなんだか好きになれないのですが、お話の展開のさせかたが、気に入りましたわ。
なんというか、とてもとても、イマの世の中、なんですわ、描かれているのが。
感心しましたの。
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