2007-05-28
それが今、我が家の物干しを不細工ながら飾っている時計草のカーテンである。
ところで、本書の中で最も気に入っているエッセイは「時計草」ではなく、「椿」である。
ある宴席で、澁澤さんのお友達がなにやら歌を歌うと言い出し、「澁澤、この歌詞をフランス語に訳してくれよ」というので、何とかばたばたと訳した。その歌詞の中に「つんつら椿」というくだりがあって、そこを迷った挙句「カメ、カメ、カメーリア」と訳したが、はたして友人氏がそのくだりを歌ったとき会場は大いに笑ったと。「私は今でも、つんつら椿をカメ、カメ、カメリアと訳したのは生涯でいちばんの名訳だと思っている」と、そういうふうに書かれていた。
カメ、カメ、カメリア……って、澁澤さんたら。
著者が、ちょっぴりお茶目なインテリの、だけど宴会の大好きなただのオジサンに感じられた、とても好きな一編である。
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