2007-11-08
原題は『La derniere neige』という。これを最後の雪、などとせず、日本語としてなんとなく据わりの悪い「おわりの」雪、としたことに、訳者もしくは編集者の力量を称えたい。訳者あとがきによれば、この作家は「父と子」あるいは「大人と少年」を好んでモチーフにしているそうである。父とあまり話をせず、また男の子ではなかった私には、どこまでいっても想像の世界だ。読み手は、だから女性のほうがよいかもしれない。
マンガレリは同じ訳者でもう一冊邦訳が出ている。それも読みたい。児童文学作家としてもう幾つも出版し文学賞も受賞しているそうだ。原書でこの静謐さに触れたいとも思わせた。
《そう、それで、父さんはぼくにこういった。
「むかし父さんも、あることを経験した。ふつうならつらいと感じるようなことだったが、おれはそうは感じなかった。だがそのかわり、自分は独りだと、これ以上ないほど独りきりだと感じたんだ……」ぼくはランプの下で手をゆらしつづけながら、父さんのいったことを考えていた。》(26ページ)
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